MUSICAL『ルードヴィヒ』で描かれるのは「圧倒的ななにか」中村倫也インタビュー公開
上演台本・演出に河原雅彦、主演に中村倫也を迎えて、日本版初上演となるMUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』。
日本でも親しまれ、おなじみとなった韓国発のミュージカル『SMOKE』や『BLUE RAIN』を手掛ける作・演出家チュ・ジョンファの新作として韓国で上演され、話題を呼んだ本作は、天才音楽家・ベートーベンの生涯を彼が綴った音楽とオリジナル楽曲描いた創作ミュージカル。
そんな本作で、青年ルードヴィヒ役として主演を務める中村倫也さんにインタビュー。
――河原雅彦さんが真面目なミュージカルをやりたいという思いから中村さんにオファーがかかった本作への思いは?
河原さんが本格ミュージカルをやりたかったというのも意外でしたし、それで僕を指名してくれるんだっていうのも嬉しかったです。河原さんには『真心一座 身も心も』(2009年)の公演に呼んでいただいて、それを観た演劇界の方が声を掛けてくれるようになって一気に世界が広がりました。役者としての仕事も少なく鬱屈していた若手時代に、演劇は自分の生きていく支えになっていました。河原さんはその道を開いてくれた方ですので、間違いなく。その人が新しいチャレンジをやるうえで「一緒にやろうぜ!」ってなったら、しんどそうだなって思いながらも、「やるっきゃねえな」って。ほんとはラクしたいですけどできないですよね(笑)。韓国の本作がすごいですよ。ミュージカルってたいてい歌がしんどいか芝居がしんどいかのどっちかなんですけど、両方トップクラスにしんどい。しんどいというニュアンスがネガティブなイメージじゃなくて、表現者として熱量を放出しなきゃいけないということ。だから「中村、頑張っているな」で終わらないように、ちゃんとそれを忘れさせるくらい巻きこめるような作品づくりをしないと、と思っています。
――本作のどういったところに惹きつけられてやりたいと思われたんでしょうか。
単純にミュージカルとしていい音楽が多いですよね。あと、そんなに世間の方のイメージはないと思うんですけど、僕、舞台になるとエネルギー放出型の俳優になるので(笑)、(ベートーベンの)生き様みたいなものは観ていて惹きつけられるものはありました。
――「観ていて」というのは韓国版の映像でしょうか?
そうそう。映像を観て面白いという予感はありました。自分が観客として観ると役者が疲れない舞台って面白くないなって思いますし、自分が関わって世に出すとなったら受け手として感じた魅力をもっと提出しないと気が済まないので。それはどの作品でもそうですね。
――中村さんにとって音楽はどういう存在ですか?
まぁ、中村と言えば音楽ですから(笑)。浸透してないことを言い切るスターっていますよね(笑)。余談でしたが、運転や家事をしている時はだいたい音楽かラジオといった何らかの音は流しています。小学生の頃から音楽が好きで、これは大人になって気付いたことなんですけど、けっこう歌詞を覚えてるなって。なんでだろうって思った時に、物語や詩世界というものに小さい頃からフォーカスして音楽に触れていた子供だったんだなと、後から気付きましたね。
――では、舞台はどんな存在ですか?
感覚的には、「ホーム」とか「育った場所」とかあるんですけど、結局のところ好きでやってるだけなんだなって思うんですよね。自分の役者としての特性を考えると舞台が一番合ってるなと前から思っています。映像もやらせてもらっていますけどさみしいなと思うのは、観終わった人の顔を見たいですよね。舞台はものづくりをするためにみんなで稽古をして本番を迎えて、一人の人の人生を描いていく。そしてそれを観た人がどんな感想を抱くのか、どんな拍手をしてくれるのかということがすごく健全なように思います。その分、立ち姿ひとつをとっても細部に至るまで観ている人はそこから想像力を働かせるので、よりしっかりと役としてそこに立っていないとバレるという怖さはあります。
――どういう点で自分は役者として舞台に向いていると思いますか?
それは教えないですよ(笑)。抽象的な方が詩的で響きがお洒落なときもあると思っているので。だから観てくれる人が「こういうところかな」って思ったり、「いやいや、そんなに向いてないでしょ」って思ってくれても全然いい。ただ自分の中では何か向いてるんじゃないかなって思っているだけです。
――今作について河原さんが仰っていた「支配力」が自分に求められることだと伺いました。具体的にどういったことなのでしょう。
なんでしょう。劇場という空間のひとつひとつの粒子までその人の色に染められているような・・・一瞬にしてその人が支配している感じをイメージしています。それが支配力という言葉に置き換わっているのかなと。まざまざと真の通った熱量を放出している物体がいると食らうし惹きつけられると思うんです。そういう物体として瞬間的にいる必要がある役という感じです。
――稽古をする中で楽しさやハードさを感じるところは?
表裏一体ですね。この作品中での自分の役割はしんどいことばかりなんです。そのしんどい中で、なんらかの手掛かりが見つかったりうまく周りとリンクして共有できたりするとそれが楽しかったりします。うまくいくこともいかないこともそのどれもが表裏一体で、大変だし面白い。それがこの仕事の豊かさだと思うし、僕がこの仕事を続けているところだと思います。
――お稽古場の様子はいかがでしょう?
子供たちがもう可愛くてね。自分の出番がまだ来てほしくないって思うくらいずっと見ていたい(笑)。ダブルキャストでカラーが違う二人なので新鮮な気持ちで芝居をやれています。河原さんは、同じ方向を目指してるなという感覚は初日からありました。同じところを面白がってるというか、同じところを斜めの目で見て笑っていたり。あと「うわっ」と思うのが、日本版なので韓国版のようにそこまで感情をぶつけなくてもそらすことで伝わることもあるんじゃないかな、ということも稽古前から言っていたんですけど、稽古に入ったらやっぱり感情をぶつけてほしいって(笑)。そうじゃないのを観たいって言ってなかった?って気持ちになりながらやるんですけど、そこが変わらずだなと思いながらやっています(笑)。
――ベートーベンの若き日の苦悩や葛藤を表現する中で、ご自身と通じるものはありますか?
彼のように音楽が好きでありながら聴力を失うという、それに置き変わる経験を僕はしたことがないですし、天才というか才能というものをまざまざと持っている人物でもないので、イコールで噛み合うものはないですけど、今回、稽古始めの本読みで初めてセリフを声に出してやったんです。そしたら、やっぱりちゃんとしんどいなという実感があって。それは自分の中での何かと結びついたんだなという実感だったんですよね。絶望という種類の経験でいうときっと誰しもが何らかの挫折をして生きていると思うんです。そういう自分の人生経験の中であるものを一生懸命拡大してくと、それに近い熱量になるんじゃないかなという矢印を稽古初日の本読みで感じて、今もやっています。
――演じる上でいちばん大切にしたいことは?
どれだけ周りの良さが出せるかということですかね。自分の役をしっかり演じることはやって当たり前なので、心がけるのはそういうところです。
――ミュージカル『ルードヴィヒ』の面白みは?
自分の経験値でいうならば、今回クラシカルな曲調がほとんどなので、それに合う歌い方や自分の楽器としての使い方に挑んでいるのはこれまでの経験の中で初めてのことだと思います。ベートーベンは、圧倒的な才能もあって常人とは共有できない感覚や見えているもの、聴こえてくる音がある中で、いわゆる普通の人ではないということはすごく大事な要素としてあるんじゃないかなと思います。物語としては彼の人生がテーマになっていますし、その中で出会う人たちとの物語ですけど、描かれる角度としては圧倒的な「なにか」なんじゃないでしょうか。
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「いつか本格ミュージカルをやりたい」という思いを抱いていた河原さんと、その思いを受け止めた青年ルードヴィヒ役として主演を務める中村さんの7年ぶりのタッグとなる本作。中村さんが言葉を残した、圧倒的な「なにか」を自らが体現し、ベートーベンの生き様をまざまざと魅せつけてくれるような、そんな観た人にとって特別な作品になるはずだとお話しを伺いながら期待が高まりました。
ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』は、東京公演千穐楽、大千穐楽(仙台公演)にてライブ配信も予定。自宅などでも、ミュージカル『ルードヴィヒ』の世界観を是非、堪能していただきたい。
公演概要
MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』
ORIGINAL PRODUCTION BY ORCHARD MUSICAL COMPANY
MUSIC BY SOO HYUN HUH
BOOK BY JUNG HWA CHOO
【出演】
中村倫也
木下晴香
木暮真一郎
高畑遼大・大廣アンナ(Wキャスト)
福士誠治
【上演台本・演出】 河原雅彦
【訳詞】森 雪之丞
【日時/会場】
<東京公演>
10月29日(土)〜11月13日(日)東京芸術劇場プレイハウス
チケット料金:全席指定 12,000円(税込)
主催:MUSICAL『ルードヴィヒ』製作委員会
お問合せ:公演事務局 https://supportform.jp/event (営業時間:平日10:00~17:00)
※お問い合わせは24時間承っておりますが ご対応は営業時間内とさせていただきます。
なお、内容によってはご回答までに少々お時間をいただく場合もございます。予めご了承いただけますようお願い申し上げます。
<大阪公演>
11月16日(水) 〜11月21日(月)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
チケット料金:全席指定 13,000円(税込)
※ご購入後の返金・クレーム及びお席の振替は一切お受けできません。予めご了承ください。
主催:サンライズプロモーション大阪
お問合せ:キョードーインフォメーション:0570-200-888(平日・土曜11:00~18:00)
<金沢公演>
11月25日(金)~11月26日(土)北國新聞赤羽ホール
チケット料金:S席 9,800円(税込)/A席 8,800円(税込)
主催:北國芸術振興財団、北陸放送、MUSICAL『ルードヴィヒ』製作委員会
共催:北國新聞社、石川県芸術文化協会
お問合せ:北國芸術振興財団 076-260-3555(平日10:00~18:00)
<仙台公演>
11月29日(火)~11月30日(水)電力ホール
チケット料金:全席指定11,000円(税込) /U-25チケット5,500円(税込)
※ご購入後の変更、キャンセルはできません。
※U-25チケットはご観劇時に25才以下のお客様を対象としたチケットです(ぴあでのみ取り扱い)。当日、身分証明書を必ずご持参ください。
主催:仙台放送
お問合せ:仙台放送 022-268-2174(平日11:00~16:00)
【公式HP】https://musical-ludwig.jp/
【公式Twitter】mu_ludwig