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和田雅成「また違った人生のスパイスを加えられる作品になる」舞台『燕のいる駅‐ツバメノイルエキ‐』インタビュー

舞台『刀剣乱舞』シリーズや「おそ松さん on STAGE」シリーズをはじめとした舞台のみならず、ドラマや映画でも活躍する和田雅成が主演を務める舞台『燕のいる駅‐ツバメノイルエキ‐』が、2023年9月23日より東京・大阪で上演される。
土田英生(MONO)が手がけた本作は、1997年に京都にて初演されると、普遍的なテーマ性が高く評価され、その後もさまざまな劇団・プロデュースにより繰り返し上演されてきた作品だ。今回の上演では、土田が大幅に脚本をブラッシュアップし、2023年の「今」ならではの『燕のいる駅』を作り上げる。
今回plus aでは、主演の和田にインタビューを敢行。本作に挑む思いや役作りについて、さらには俳優業への想いなどを聞いた。

――まずは、本作への出演が決まったお気持ちからお聞かせください。

僕が演じる高島啓治という人物は、すごく普通の人物です。僕が今までやってきた作品は、華やかな世界を描いたものが多くて、なかなか普通の人を演じる機会というのがなかったんですよ。なので、今回、そうしたオファーをいただけたのが嬉しかったです。

――確かに、いわゆる2.5次元作品だと普通の人というのはなかなかないですし、それ以外でも芸能界を舞台にしていたり、特殊な職業だったりと、なかなか舞台で普通の人というのはないですよね。

そうなんですよね。特に今作は、僕より年上のベテランの方たちが多い中で、とても重要なポジションを任せていただけるので、それもまた嬉しいことでした。それに、熱量高めにオファーをくださったので、それもすごくありがたいと思いました。

――最初に脚本を読んだ時の率直な感想は?

脚本、演出家さんの持つ世界観が明確にある作品だと感じました。今はまだその世界観を完璧に掴み切れていないと思いますが、稽古を通してしっかりと掴んでいきたいと思います。

――会話だけで物語が紡がれていく「会話劇」の本作ですが、「会話劇」ならではの難しさは今の時点で感じていますか?

会話劇だからということはないように思います。今年の4月に舞台『ダブル』という作品に出演させていただいたのですが、それも会話劇でした。その時に、会話劇は役者の技量が全て出る作品だと感じたのですが、逆に技量なんて必要なのかという思いにも至ったんですよ。人間は生きていく上で、「会話が上手い」ことは絶対に必要なものではないじゃないですか。今作の登場人物たちも特別に会話が上手いわけでもないんですよ。そう考えると、うまく見せようと考えるよりも、目の前の役者さんとその世界を生きていけばいいんじゃないかとも思いました。矛盾していますが…技術も必要だけど、必要ではない。今はそう考えています。

――では、今回演じる、「日本村四番」の駅長・高島啓治という役については、今はどんなキャラクターだと考えていますか?

先ほど、脚本をまだ掴め切れていないと言いましたが、高島についてもさまざまな人物像が見えています。劇中では「のんびり屋さん」と言われてますが、果たして本当にのんびり屋なのか。僕が深読みしすぎているだけかもしれませんが、もしかしたら、わざとのんびりしているだけなんじゃないかなとも思ったんです。実は、全部を知っていて、わざとやっているのかもしれないと。なので、今の時点でこんな人物だとは言えないのですが、側から見るとのんびり屋さんで、カレーパンが好きな青年です。

――共演者の方の印象も教えてください。もうすでにお会いしましたか?

何人かはご挨拶をさせていただきましたし、(高月)彩良ちゃんとさとちゃん(佐藤永典)は共演経験があります。

――高月さんと佐藤さんは、和田さんから見てどんな方ですか?

彩良ちゃんは、年下なのですが、落ち着いていて、とても上品な女性というイメージです。さとちゃんは、めちゃくちゃ毒を吐くんですよ。オブラートに包まないんです。とにかく、何も包まない(笑)。でも、それって、嫌味がないということでもあるので、人に嫌われることもない。ある意味、究極だなと思いました。

――土田さんとも初めてと聞いていますが、稽古に向けての期待を教えてください。

土田さんともまだお話しできていないので、どのような演出をされるのかすごく楽しみですし、初めましての役者さんとお芝居するのもすごく楽しみです。自分が初めて出会う感情があると思うので、どんな稽古場になるのかワクワクしています。

――では、改めて本作の魅力を教えてください。

まず、会話の面白さがあると思います。普通の何気ない会話の中に、さまざまなキーワードが散りばめられているんですよ。高島が何気なく「カレーパンが好き」と言いますが、実はそれがクライマックスに繋がっていたり…。どのシーンも注目していただきたいですし、きっと2回目を観たくなると思います。余白があるストーリーなので、観た後に「あれって、こうだったんじゃない?」「ああだったんじゃない?」と話したくなります。そんな作品になると思うので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

――和田さんのことについても聞かせてください! 東京で俳優活動を始めてから今年で10年になりますね。

あっという間でしたね。こうして続けられているということは、いい10年だったんじゃないかなと思います。大阪でも1年活動しているので、芸歴としては11年目に入ったのですが、芸能生活10周年目の時には「仮面ライダー」にもなれたんですよ。僕は何も分からない中で活動を始めたのですが、そんな僕でも10年続けていたら形になるんだなと思いました。「仮面ライダー」が正解だと言っているわけでも、そこがゴールなわけでもないのですが、僕でも続けていればヒーローになれるんだと感慨深い思いはありました。

――この10年間の中での、ターニングポイントとなった出会いや出来事は?

たくさんありますが、今の事務所の社長と出会えたことは大きかったと思います。間違いなく僕の人生を変えてくれた人ですし、今の僕があるのは社長のおかげです。僕は、頑固でわがままだとよく言われますが、本当に昔から考えが変わってないんですよ。昔からずっと「売れたい」だけです(笑)。その考えは変わらないと思いますが、社長と出会ったことで出会う人が変わり、必然的に自分が変化しているのかなと思います。

――「売れたい」の根底には、どんな思いがあるんですか?

家族への想いですね。僕の主戦場は舞台ですが、母親が毎朝、朝ドラを観ていたので、今でも目標は朝ドラなんですよ。家族は、舞台も観にきてくれますが、普段、観ているテレビでも輝いている姿を見せられたらという思いがあります。もちろん、舞台は大好きですし、舞台を否定するわけでもないですが。

――そうすると、俳優を目指そうと思ったのもテレビがきっかけだったんですか?

そうです。進路を決める時にやりたいことがなくて、でも目立ちたいなって。モテたいではないんですよ、目立ちたいなんです(笑)。そこから始まっているので、テレビでした。

――30代を迎えたことで変化はありましたか?

後輩の役者さんが増えていますし、もしかしたら落ち着いてきたのかもしれないですね。自分では分からないですが、やっと地に足がついてきたのかなと思います。ありがたいことに、主演を任せていただくことが増えてきたのでより責任を持たないといけないとも思っています。今まで、「生半可な気持ちで真ん中に立っちゃいけない」という思いがずっとあったんですよ。だからこそ、主演という立ち位置を与えてもらった時には「僕、今、真ん中に立ってます」っていう思いが出てしまっていたと思うんです。でも、今は心から自分だけの力でここに立っているわけではないと思えるようになりました。そういう意味でも大人になったのかなと思います。

――先ほど、朝ドラが目標というお話もありましたが、10年後の自分を想像した時に、どんな姿が理想ですか?

つまらない答えですが…役者を続けられてたらいいなと思います。きっと僕は、「売れたい」という思いは一生変わらないと思うんですよ。50代、60代になっても多分、同じように思っていると思います。その時に役者を続けていられるということは、その気持ちがブレずに続いているということだと思うので、役者として続けていければいいなと思います。

――「売れたい」と思い続けることもパワーがいることですよね。

僕は負けず嫌いなんで、やるからには1番を取りたいという思いがあるんですよ。きっと、ただそれが続いているだけなんだと思います。なので、主演にこだわるというよりは、「上手くなりたい」「1番でありたい」という気持ちが強いのかなと思います。

――そうしたら、和田さんの中でゴールってないんですね。

ないです。多分、死んだ時がゴールです。

――では、舞台に出演することの面白さはどんなところに感じていますか?

お客さまがいるからやっているだけです、僕は。舞台は大好きです。ですが、なんで舞台が好きかと聞かれたら、「お客さまとその時間、空間を共有して、一緒にその世界を生きている感覚」があるから好きなんです。やっぱりお客さまに喜んでもらいたいと思いますし、お客さまがいるから舞台をやっていられる。すごく嫌な言い方ですが、僕、日に日にかっこよくなっているんですよ。

――(笑)。突然ですね。

いや、本当に(笑)。もし、一般の仕事についていたとしたら、僕は多分、めちゃくちゃ不細工だったと思います。今、芸能の仕事をしていて、お客さまの目があって、お客さまが僕を輝かせてくれるから、いくらでもかっこよくなれるんですよ。だから、舞台に立っているんだと思います。自分が輝ける場所なんです。

――今のお話もそうですが、俳優という活動を続けていくにあたっては、ファンの方との関係は切っても切れないものだと思います。そうしたファンの方に対しての想いをお聞かせください。

感謝はもちろんしています。本当にありがたいです。ただ、無理をしないでもらいたい。僕は、お互いがお互いの人生に必要なものであればいいなと思うんです。先ほど、お客さまが僕を輝かせてくれると言いましたが、僕もその人の人生を輝かせたい。そんな関係性を築けたらいいなと思います。なので、無理なく応援してください。自分が必要だと思った時に応援してください。それに対しても僕は100パーセントで答えていきたいと思います。

――「お互いに」というのは素敵な関係ですね。

片側だけだとしんどくなりますよね。お客さまも、舞台を観に来るのにチケット代も時間も必要ですし、グッズ代も交通費もかかる。僕はそうしたお客さまの想いに応えているつもりでも、そう感じていただけないとそれはしんどいだろうと思うので、お互いに無理なくとは常々思っています。

――最後に、改めて読者にメッセージをお願いします。

今回、初めてご一緒する役者さんも多いですし、新しいものがたくさん生まれてくると思うので、僕を応援してくれてる方たちにもまた違った人生のスパイスを加えられる作品になると思います。何度でも楽しめる作品なので、余すことなく堪能して欲しいと思います。

取材・文 / 嶋田真己

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・賞品のネットオークション等での転売は、禁止いたします。
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公演概要
舞台『燕のいる駅‐ツバメノイルエキ‐』

【脚本・演出】土田英生

【出演】
和田雅成、小沢道成、高月沙良、奥村佳恵、佐藤永典、尾方宣久(MONO)、久保田磨希

【日程・会場】
2023年9月23日(土)~10月8日(日) 東京・紀伊國屋ホール
2023年10月14日(土) 大阪・松下IMPホール