佐藤流司&橋本良亮の再タッグに「もう最初から勝ったようなもの」演出 鈴木勝秀 舞台『近松忠臣蔵』インタビュー
日本の演劇界の頂点に名を刻む近松門左衛門。そして、忠臣として歴史に名を残す大石内蔵助。歴史の流れに飲み込まれながらも、貫かれた友情を、佐藤流司主演、橋本良亮出演で上演される。
今回plus aでは、上演台本・演出を務める鈴木勝秀さんにインタビューを決行。
2023年上演の音楽劇『逃げろ!』~モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテ~(以下、『逃げろ!』)より再タッグとなる佐藤さんと橋本さんについてや今作の上演に至るまでの想いを聞いた。
――今回、近松門左衛門と大石内蔵助を題材にしたのには、どういった経緯があったんでしょうか。
2019年に『BLANK!~近松門左衛門空白の十年~』(以下、『BLANK!』)を上演した時に、20代の近松門左衛門と大石倉之助を描いたんですが、それが面白かったんです。『BLANK!』は、近松洋男さんが書かれた『口伝解禁近松門左衛門の真実』という本が基になっているんですが、半分くらいしか使ってなかったんです。なので、いつか大石内蔵助が討ち入るところまでの話をやりたいと思っていたんです。それで『逃げろ!』をやった時に、はっしーと流司の息がとても合っていたので、「こういうの考えてるんだけど、興味ある?」って聞いたら「あります!」と言ったので、今に至りました。
――ご本人たちの希望でもあったんですね。
そうですね。あの2人が良いコンビというか、呼吸がとても合っていたので『逃げろ!』だけで終わるのはもったいないと思っていました。『逃げろ!』では、ダ・ポンテとモーツァルトだったので、今度は近松と大石という歴史上にいた人物だけど全然史実に基づかない話にして、ロックテイストでやったらいわゆる日本における『忠臣蔵』のイメージとは全然違う世界ができるんじゃないかなと思いました。
――『忠臣蔵』のお話は好きな方が多いですよね。
主君の仇を打つというのは、僕は嫌いなんです(笑)。大石内蔵助は本当にそう思っていたのかなっていう疑問をずっと持っていて。「本当は自由気ままに遊んでいたかったのでは?」という説もあるんです。あの状況になってしまったらもう仇討ちをするしかなくなっていく。家もお取り潰しになってしまうので浪人になるか、、それとも若い奴らで集まって討ち入りをするか。そういったことを歴史上ではほとんど繋がりがないはずの近松門左衛門に相談していた、というのが近松洋男さんの本には書かれているんです。歴史の研究者的にみたら何の証拠もなくて、ただ近松家に伝わっている話に過ぎないとまで言われているんですが、「なぜそんな本を書いたんだろう」ということも含めて面白さを感じたんです。なぜ大石は仇討ちをしたのか。なぜ近松は侍を捨てて芝居の道を選んだのかという。そこに2人の共通点があったから、20代で知り合って最期まで親友としていられたという方が納得がいくし、面白い!それを流司とはっしーがやったらきっとうまくいくだろうと。
――お二人の息が合っていたというお話がありましたが、どんなところにそう感じられたんでしょうか。
相手に対して肯定的であるということですよね。共演者のことをあんまりよく思ってないとか、ちょっと否定的なものを含んでいると舞台上に出てきてしまう。逆をいうと、お互いに相手を肯定している人が一緒に芝居をしているとそれ以上のものになる。それは脚本や演出を超えてとても良い関係のものを見ることになるので、もう最初から勝ったようなもんだって思っています(笑)。
――おふたりがやれば(笑)
そうです。肯定的な気持ちがお互いにある人たちが集まって芝居をしようというのは、はっきり言えば仕事じゃなく遊びの方に近づいていくんですよね。僕は芝居というのは遊び心が大事だと思っているので。今日も(ビジュアル撮影日)流司と久しぶりに顔を合わせれば、そこでピンとくるものがあって、流司もちょっと話しただけでとても柔らかい顔になり、遊びに来ている状態になっている。でもそこはプロだから決める顔はできるし、モニターを見ながらいろいろ自分で工夫をしていくからカメラマンもどんどん楽しくなってくるし、アイデアも出てくる。
――アイデアが生まれるという繋がりでいうと、今回の台本はあてがきもあるんでしょうか。
あて書きというか、流司ならこれくらいのセリフ量は言えるだろうとか、はっしーだったらこの少なさでも感情を表現するんじゃないかとか、細見(大輔)だったら説明的なセリフばっかりでもなんか面白くするんじゃないかとか(笑)。滝(陽次朗)は今回どれくらいいけるか試してる部分もあって、いけるんだったら稽古をやりながらどんどん膨らませようというようなことはあります。
――では、最後にお客さまへメッセージをお願いします。
さっきも言ったようにフィクションなので、好きなように解釈してもらうのが1番です。よく分からないことがあっても気にしないで楽しんでもらえればいいですし、楽しめるものができると思っているので何の準備もなく観に来ていただければと思います。ちょっと引っかかることがあったり、もう1回観たいと思ったらチケットがある限り観てほしいなと思います。ただ、芝居はお値段もそれなりにするし公演期間も限られているので、やる側も観る側も一発勝負。なので、まずはその一発勝負を楽しんでいただけたらなと思います。

流司くんとはっしーくんのインタビュー記事はこちらからどぞぷら!
波乱万丈の青春期を過ごし、赤穂塩の専売とその販路開拓事業に励んだ、大石良雄と近松門左衛門。その後、大石は播州赤穂藩の筆頭家老、一方、近松は武士を捨てて戯作者となった。だがふたりは、武士と町人に身分は分かれたが、日々その友情を深めていた。
時を同じくして、江戸城内。
勅使饗応役を命じられた赤穂藩藩主の浅野内匠頭長矩は、教育係の高家肝煎の吉良上野介義央から、イジメともとれる厳しい指導を受けていた。吉良の理不尽な指導に耐えきれなくなった浅野は、江戸城「松の廊下」で、ついに吉良に斬りつける刃傷事件を起こす。いわゆる「赤穂事件」の発端である。
将軍・綱吉の逆鱗に触れた浅野は、即日切腹、赤穂藩は改易に処された。筆頭家老である大石は、「主君の仇討ち」という重荷を背負わされることになる。そして――
鈴木勝秀
[プロフィール]
1987年、プロデュースユニット・ZAZOUS THEATER(ザズゥシアター)を旗揚げ。97年まで主宰者として構成・演出を務める。その後は個人で活動し、翻訳劇からオリジナル戯曲まで幅広く、150 本を超える作品の演出を手掛け現在に至る。近年の作品に、音楽劇『逃げろ!』~モーツァルトの台本作者ロレンツォ・ダ・ポンテ~、『僕らの千年と気にが死ぬまでの30日間』、 Rocking『ピーチ』~芥川龍之介「桃太郎」より~、音楽劇『ピーターと狼』(2023年)、ルール~『十五少年漂流記』より~、『ソーセージ』~ウィリアム・シェイクスピアの「間違いの喜劇」より、朗読劇『メメント・モリ』(2024年)などがある。
公演概要
舞台『近松忠臣蔵』
【上演台本・演出】鈴木勝秀
【音楽】大嶋吾郎
【出演】
佐藤流司
橋本良亮(A.B.C-Z )
瀧陽次朗(少年忍者)
瀬戸祐介
細見大輔
ブラザートム
<ミュージシャン>
大嶋吾郎/GRACE/沖山優司/YOKAN
【日程・会場】
<東京公演>2025年5月30日(金)~6月15日(日) IMM THEATER
<大阪公演>2025年6月20日(金)~6月22日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
【チケット料金】全席指定 11,000円(税込)
※ご購入後の返金・クレーム及びお席の振替は一切お受けできません。予めご了承ください。
【お問い合わせ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
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