『SPAMALOT』舞台を生み出す立役者 クリエイターに迫る
ちょっと、ここだけバナシ。
ミュージカル『モンティパイソンのSPAMALOT』 featuring SPAM
衣裳・神波憲人さん 編
カフェで話しているようなリラックスした雰囲気で、作品に携わるクリエイターの方々に話を聞かせてもらう、“ちょっとここだけバナシ。“
今回のプラスな話を届けてくれるは、2012年の初演から『モンティパイソンのSPAMALOT』featuring SPAM(以下SPAMALOT)の衣裳を手掛けられる神波憲人さん。元々、「とんねるずのみなさんのおかげです」(CX)や「めちゃ×2イケてるッ!」(CX)といったコメディの衣裳を担当されることが多かったという神波さんが、初めてミュージカルに携わったのが『SPAMALOT』。初めて衣裳を見た時のことなど、衣裳さんならではの視点からみた『SPAMALOT』のお話しをたくさん伺いました。是非、ご覧ください!
―2012年の初演ではどういったところからのスタートだったんでしょうー
実は僕自身、ミュージカルという演目に携わったのが初めてだったんです。最初、ミュージカルって僕の中ですごい敷居が高いイメージがあって、なにか縁遠いというか。衣裳の仕事として携わるのがコメディとかそういうことの方が多かったので、ミュージカルの衣裳ってどんなものなんだろうというところから始まったんですね。しかも、ずっと世界を渡り歩いてきた衣裳を使うと言われた時に、ものすごい衣裳が届くんだろうなっていうことが最初に思った印象でしたね。
―初ミュージカルということですが、当時はどんなお仕事が多かったんですかー
この職業を初めて30年くらいですかね。元々テレビとか映像の仕事の方が多かったんです。そこで、福田(雄一)さんの作品もずっとやらせていただいていて。福田さんが舞台で演出をされるようになった時にお声掛けをいただいて僕も舞台の世界に入るようになったんです。でも、福田さんもミュージカルをやったのが初だったと思うんですよね。それで、「みんなで楽しいことがやれたらいいよね」っていう感じでスタートしましたね。僕も初だったのでいろいろ不安だったんですが(笑)。
そんな不安を抱えながら最初に衣裳を見た時はどうでした?
もう、不安だけでした(笑)。
見て余計に(笑)
とにかく、「すげぇ衣裳届いちゃったな」って(笑)。これをどういう風にしたらいいだろうっていう。扱い方も何もわからないので(笑)。
取扱説明書みたいなものがあるわけではないんですか?
あるわけでもなく。ただ、”アーサー王だったらアーサー王の衣装はこれです”っていうだけで送られてきたんですね。しかも持った時に、「この衣裳重たいな」って・・(笑)。だから、これを役者に着せて踊らせるんだっていうことがまず頭をよぎりました。そして、自分の職業としてこれを扱うんですけど、それ以上に自分がこれを着せなきゃいけないんだって思った時に、果たしてこれ大丈夫なのかなっていう不安もありましたね。
今まで扱ってきた衣裳と大きく違うところは?
見たことのない素材とかでしょうか。ほとんどが初めて触るものだったので。生地とか重量感とか。やっぱりブロードウェイなどでやられている衣裳ってすごいんだなっていうイメージでしたね。
衣裳を扱うにあたり気を付けられたところは?
その方たちの体型に全部直さないといけない作業が始まるんですけど、なんせ扱うのが大変な衣裳なので、そのあたりを気に掛けながらみんなのサイズに合ったものに変えていくところですかね。
元々あるものを崩さず変えるという作業が想像もできないです・・
実は、女性アンサンブルの衣装がすごく大変なんです。数が多いというのもあるんですけど、意外とセクシーな衣裳が多いんですよね。キャメロット城のシーンのところで、みんなビキニみたいなウエイトレスの恰好をしたりするんですが、結構激しい踊りをするので身体にフィットしてないと、あの、、ハプニングが起きちゃうですね(笑)。
(笑)それは大変!
ものすごい衣裳なので(笑)。だから、アンサンブルの子たちも初めて見ると、「え、これを着るの・・」という話になると思います(笑)。前の時はみんなそうだったので(笑)。だから、アンサンブルの衣裳は身体に合わせて作っていかないといけないのと、尚且つ、最初に衣装合わせをしていても踊ったりしていくと皆さん体型も変わってくるので。
身体が絞れてきますよね。
そうなんです。緩くなったとか起こりうるので。まぁ、必ず起こるんですけど(笑)。なので、そこで僕らが対応していかないといけないので、そこらへんは大変かなあって思いますね。
そんな不安から始まった初演でしたが、公演を終えた時はいかがでしたか?
達成感と言いますか、やり遂げた感はありました。何より、キャストの皆さんがものすごく頑張ってくださっていました。あれでよく踊ったり歌ったりしていただけたなあっていう。実際、自分が用意していたら違った衣裳になっていたんでしょうけど、ずっと渡り歩いてきた、言わばすごく伝統のある衣裳なので、そういうものに触らせていただいて扱わせていただけたというのも非常に良かったなと思います。すごい勉強になりましたね。
当時、キャストさんも最後まで体力が持つか・・などと仰っていましたが。
そうですね。ユースケ(・サンタマリア)さんだったり、(池田)成志さんとかもそうでしたけど、とにかくずっと「重い重い」って言ってたので(笑)。でも、本当に申し訳ないんですけど、これでやっていただくしかないんですっていうことしか僕は言えなかったので、、伝統でずっとこれできているものだからという風に納得していただいて(笑)。
今回のキャストの皆さんも同じ道を歩まれるんですね。
今回も「これ着るの・・」って、みんな着た時にやっぱり言われましたね(笑)。矢本(悠馬)くんとかも、あのリュックはほんとに重いので。あの当時、マギーさんもお稽古中に(リュックを)背負いながらやっていたんですけど、ものすごく痩せていましたから。いい痩せ方をしていったというか、鍛えられちゃって(笑)。最終的には痩せマッチョみたいになっていたので、たぶん矢本くんもそうなるんじゃないかなって。
そんなに重い衣裳とは知らなかったので、体力の心配をされているのはロングラン公演だからかと思っていました。
あの重い衣裳を着て歌って踊るのは結構大変だと思います。今回の方々はまだ、それを体験されていないので、そこは皆さんの課題にはなってくるのかなと思います。
初演は初めてのことだらけで大変だったと思いますが、再演(2015年)ではいかがでしたか?
再演ということでしたので一度経験をしていますから、正直あまり不安はなかったです。それより、「またやれるんだ!」という、そっちのわくわく感の方が強かったですね。初演をやった時に、ほんとに面白い作品だったので、また「アーサー王に会える」「ランスロット卿に会える」とか、そういう想いの方が強かったですね。キャストの皆さんも一度経験をされているので、たぶん自分たちの中で、全力でやっていた時とちょっと余裕を持った役になっていたから、より面白さが洗礼されていた感じがしました。
そこから6年、新キャストの方々を迎えての2021年版『SPAMALOT』はどのように感じますか?
新しいキャストの皆さんなので、僕もちょっとそこは初心に戻れるというか、また初演の時の想いに近い感じでいたりもしています。そしてこれから、彼らが大変なことになってくると思うので、少しでもなにか、衣裳の方でもサポートができればいいなと思っています。とにかくみんなで頑張って面白いものを提供できるように。でも、キャストの皆さんそれぞれ前回と違う形の個性がある方々ばかりなので、非常に楽しみです。新しい『SPAMALOT』が見られるという。
最後に、神波さんから見るSPAMALOTの魅力とは?
とにかく、何も考えず、にただただ面白いことをやっているキャストを見て笑っていただければいいなって思います。実は、舞台裏でもみんなゲラゲラ笑っているので(笑)。観た方はわかると思うんですけど、僕が一番好きなのは、ハーバード家のところでお父さんと守衛さんのやり取り。当時だと、皆川(猿時)さんとマギーさんがやられてたんですけど、二人でずっとボケ合うっていう。あれがもう、僕は大好きで。いつもあそこのシーンだけは舞台袖でずーーっと観ていて。それでいつも成志さんに、「カンちゃん、お前そこのシーン好きだな」「ずーっと笑ってんな」って言われて(笑)。まあ、全然飽きなかったですね。それくらいキャストもスタッフも、ずーっと笑いの中でやらせていただいているので、とにかく観に来ていただいた方には、何も考えず気兼ねなく、大いに笑っていただきたいです。こういうご時世なので、笑いでいろんなことを吹き飛ばせられたらいいなって思いますし、みんなで笑いの空間を作れたらいいなと思います。
神波さん、ありがとうございました!
最後に「ないと思いますよ。こういうカンパンニーは」と、言葉を残した神波さん。「不安だった」「大変だった」という話をされる中でも、表情はにこやかで、楽しそうで。そこに神波さんの仕事への取り組み方が詰まっているような気がしました。常に気を配り、細部までの並々ならぬ”こだわり”が信頼となり、キャストの方々が安心して舞台に立てる。まさに、舞台を支える“縁の下の力持ち” 。初演から再演、そして2021年と、ずっと携わってきてくださった方が言う、「こんなカンパニーはない」というカンパニーが創り上げる最高の空間は最高に贅沢な時間を届けてくれるんだろうとなと思わせていただけるインタビューでした。
【公演概要】
ミュージカル『モンティ・パイソンのSPAMALOT』 featuring SPAM®
【脚本・詞】 エリック・アイドル
【音楽】 ジョン・ドゥ・プレ&エリック・アイドル
【原作】 映画『Monty Python and the Holy Grail』より
【上演台本・演出】 福田雄一
【出演】 山田孝之 / 賀来賢人 / 小関裕太 三浦宏規 / 矢本悠馬 / じろう(シソンヌ) 長谷川忍(シソンヌ)/ 新妻聖子 ほか
【会場・日程】
<東京>2021年1月18日(月)~2月14日(日)東京建物BrilliaHALL
<大阪>2月18日(木)~21日(日)オリックス劇場
<福岡>2月26日(金)~28日(日)福岡市民会館大ホール
【チケット料金】S席14,000円(税込)/A席9,000円(税込)※全席指定※未就学児入場不可
【お問合せ】
<東京>サンライズプロモーション東京:0570-00-3337(平日12:00~15:00)
<大阪>キョードーインフォメーション:0570-200-888(月~土 11:00~16:00/日曜・祝日は休業)
<福岡>キョードー西日本:0570-09-2424(月~土 11:00~17:00)
【公式HP】 https://www.spamalot.jp/
【公式twitter】@spamalot_jp