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ミュージカル『BARNUM』舞台を生み出す立役者 クリエイターに迫る

19世紀半ばのアメリカで大きな成功を収め、サーカスを上演するために奮闘した興行師のP.T.バーナム。そんな彼の半生を描いたブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM』が、3月6日(土)より東京芸術劇場 プレイハウスの上演を皮切りに兵庫、神奈川を巡演する。
本作はブロードウェイで大ヒットを記録し、ロンドンでも公演された人気作で、今回が日本初上演となる。そんな本作のプロデュースを手掛ける、シーエイティプロデュース代表取締役 江口剛史さんに、plus aオフィシャルサポーターの青野紗穂さんがインタビューを実施。同氏プロデュースによる来月3月上演Broadway Musical 「IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ」の出演を控えるなど、これまでもシーエイティプロデュース製作作品に縁深い青野さん。初めてのインタビュアーに緊張しながらも、『BARNUM』を上演するにあたってやキャスティングについて、さらに、演者として気になる質問をぶつけていただきました。是非、ご覧ください♪

【青野】もともと私は、映画『グレイテスト・ショーマン』(2017)がすごく好きなんですが、江口さんが、P・T・バーナム(以下バーナム)をクローズアップした作品を見たときどう思われましたか?

【江口】僕も『グレイテスト・ショーマン』を観て、ほんとに素晴らしい作品だと思いました。バーナムの、いかさま師やペテン師と言われながらも自分の夢を実現してきた男というところは史実と変わらない形で描かれていたので、そういった点では非常に面白かったです。ミュージカル『BARNUM』のオリジナル作品は、1980年にブロードウェイで上演をされているので、映画よりも舞台の方が史実に近いんですね。今作は、バーナムと妻のチャイリーに焦点を絞って描いているので、二人の会話を軸に話が展開していきます。そういう点では映画とは全く違うものだと思って観ていただいた方がいいかなと思います。

【青野】バーナムの話ってサーカスではなく、見世物小屋として話を進められているように感じていて。そういう黒い歴史の部分を舞台で描くことは難しいと思うんですがー。

【江口】こういったコロナ禍ではなかったら、グレーなところをもっとグレーに出していこうというのはあったかもしれないです。重いテーマをちゃんと見せていくという。ただ、今回は夢を持つ男という方向に振ろうとしているので、映像を使用するなどして、ショーとしてちゃんと見せていこうと演出家と考えています。

【青野】キャスティングについてなんですが、まず、加藤和樹さんの印象はいかがでしたか?

【江口】加藤さんは、バーナムだなとつくづく思いましたね。バーナムって、格好いいけども、チャーミングかつ人を包み込むオーラみたいなものがある。そういった点では、加藤さんはピッタリだなという印象を持ちました。今、歌稽古をやっているんですが、やっぱりショーマンだなという立ち振る舞い。イメージビジュアルでもそうですが、センターに立ったときの、リーダーとしてやっていくという姿にキャスティングをして良かったなと思います。

【青野】では、朝夏まなとさんは?

【江口】朝夏さんは、今回初めてご一緒させていただくんですが、ミュージカル『ローマの休日』(2020)を観たときに、バーナムの妻という、快活でエネルギーがあるけど、夫を心配して支えていくという役もすごく合っている気がしました。加藤さんと『ローマの休日』でご一緒されていたこともあって息もピッタリですし、二人の夫婦像が偽物ではない感じがします。元宝塚歌劇団のトップスターでいらっしゃるから華もあるし、ステージに立つ姿も綺麗で、ほんとに素晴らしいお二人です。

【青野】矢田悠祐さんは?

【江口】これからどんどん活躍されるミュージカル俳優の一人だと思っています。歌を任せたら安心ですし、トム・サムという難しい役どころを歌でいざなってもらえるんじゃないかと思っています。まさに今演出家と、どう見せていくか話し合っているんですが、矢田くんの可能性に期待していますね。

【青野】私は、朝夏さんと矢田さんと共演をさせていただいたことがあるんですが、舞台上で何が起こっても大丈夫だという安心感がありました。

【江口】矢田くんは、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』(2020)といった難しい役もやってらっしゃるし、勢いもあります。他のキャストももちろん、中尾ミエさんも圧倒的な存在感がありますし、フランク莉奈さん、綿引さやかさん、原 嘉孝(ジャニーズJr.)さん、内海啓貴さんと、素晴らしいバランスでカンパニーが仕上がったと思います。本当に全員が一緒にやっていこうという空気感があるので。サーカスってそういうチームなんですよね。先日、木下サーカスを観に行かせていただいて改めて感じました。チームで作っていくという点では、我々のミュージカルもいいチームになるんではないかなと感じています。

【青野】私も木下サーカスを観に行ったことがあります(笑)。

【江口】いいでしょ(笑)。

【青野】めちゃくちゃ楽しかったです(笑)。サーカスっていろんな人が集まっていろんなものを作り上げていて。誰が主役、とかではないものなんだなと思って。

【江口】今回キャスト全員には、木下サーカスを観に行っていただきました。僕たちが描く世界は、サーカスが常にあるから。観て体感すると、ショーマンとしてのすごさを感じるはずです。常に命がけですし。みんなで協力し合っている精神性というものを、本作でもサーカスという世界を少なからず描くのであれば、観てもらい、発展してもらえたらと思っています。ただ我々は、サーカスをするわけではなく、ミュージカルという世界で、音楽で歌で演技で、木下サーカスさんに負けないエンターテインメントを作れたらと思います。

【青野】今、コロナ渦でお稽古をすることが大変だと思うんですが、製作側としてどういったところに気を付けてらっしゃるんでしょうか。

【江口】これは基本的なことになりますが、日々の生活リズムですね。自宅と稽古場で検温して、マスクでの飛沫防止、手消毒による接触感染の防止、そして三密を守り夜遅くには外食をしないという、基本的なことを徹底すること。とにかく基本に忠実にやる。あと、これは結果論になりますが、本来であれば、『BARNUM』は、オーケストラを20人近く入れてやるような大作なんです。それこそサーカスシーンを組み込んでやるといった。でもこの時期に現場が三密になるようなことはできないので、新しいテクノロジーを駆使し、『BARNUM』の世界観を出したいと思っています。これはもう偶然かもしれないですが、結果的には新しい技術と生の舞台を融合させるいいチャンスになると思っています。ウィズコロナの中での僕たちの表現のひとつになるかもしれないです。

【青野】コロナ渦では、演出の仕方も変わってきていると感じることがあります。例えば、演者同士の接触を避けるなど。生の舞台だからこその良さが半減してしまうことに対する抵抗はありましたか?

【江口】むやみな接触はする必要はないと思いますが、シーンとして必要なものは残しています。例えば、ラブシーンを以前のようにはできないですが、ディスタンスを取ってちゃんと見せるとか。そこは変わらずやっています。大切なのはPCR検査や消毒を徹底してやるといった、役者の皆様の安全を確保すること。表現上、密になることが必要なときには、安全を日々確認しながら作っていく。舞台の床面を抗菌処理したり、安全を徹底してひとつずつ実施することで、より従来の芝居に近くなるように見せていく。先ほど言及したように違う方法で見せられるものはその方法を取り入れて、ショーとしての完成度を上げていきたいと思っています。

【青野】お客さまにはどんな思いを持って来ていただきたいですか。

【江口】”夢は持っていてください。夢は実現できます“というメッセージを持っているミュージカルです。コロナ禍で憂鬱な日々の中、”明日はある“というと甘い言葉かもしれませんが、それを絶対に忘れないでもらいたい。それを伝えるメッセージがこのミュージカルには必ずありますので、それを観ていただくことが僕にとって今回一番の目的だと思っています。

【青野】作品のことから話が逸れてしまうんですが、すごく気になっていることがあって・・。江口さんがキャスティングをするにあたって一番重要視しているところはなんでしょうか。

【江口】そうですね、”縁”でしょうか。台本を読んだときにふっとイメージをするんですよね。誰がいいのか。そこからオファーをさせていただいて、すんなりといくときといかないときがあるので、縁を感じますね。

【青野】縁なんですね。やっぱり。

【江口】だから青野さんとも、ミュージカル『ソーホー・シンダーズ』(2019)のときにピンッと来て是非、出演していただきたい思いました。

【青野】嬉しいです。

【江口】無責任なんだけど、勘というか(笑)。今回そういった点でも朝夏さんに感じましたね。当然、僕だけじゃなくていろんなご縁がある中で、今一緒にやろうとなる。縁が生まれる瞬間ということはそういうことなのかなと思います。

【青野】すごくいいこと聞いちゃった(笑)。今ミュージカルがすごく人気があるじゃないですか。ファンの方からもどうしたらミュージカル女優になれますか?といった質問を受けるんですが、江口さんはどのように感じますか?

【江口】ミュージカルって一番大変だと思っているんですね。歌わないといけない、ダンスもしないとけないという、いろんなスキルを求められるわけですから。当然、セリフを読むという表現も含めると、きちんと基礎を勉強されていることが重要だと思うんですね。海外においても基礎のレベルを持った人の中から抜きん出ることが大変なわけですから。ただ、そこでオーディションに受かる子って、枠にとらわれていないというか。

【青野】枠にとらわれない?

【江口】例えば、この範囲で好きなことをやっていいよと言うと、みんなこの決められた範囲でしか動かなかったりするんですけど、ある子は外に出て扉に入ってくるところから演技をする。そうすると、その子の持っているポテンシャルっていろいろあるなと思うんですね。無茶なことをやれということではなくて、与えられたテーマに対して、僕たちが想像もしてないことをされたときには、すごいなと思う。オーディションで、ここで歌ってくださいって言うと、歌うだけじゃなくてダンスを交えて歌うとか。僕のイメージでは枠にとらわれない方がいいような気がしますね。こうあるべきだというのがない。その中でキラッと光るものがあった方が僕たちは引っかかるというか、気になる。

【青野】すごく勉強になります。

【江口】僕の方が緊張するよ(笑)。オーディションを受けているみたい(笑)。

【青野】聞きたいことがいっぱいあって(笑)。『BARNUM』もそうですが、江口さんがこの作品をやりたいと思うきっかけはなんでしょう?

【江口】『BARNUM』は、知人から紹介をされて、そこから見ていったらこれは面白い、今やるべきだ、といろんなことをクリアしていきました。だから作品と出会うのも運なんですよね。さっきから直感みたいなお話でほんとに申し訳ないんですけど(笑)、何の実質的な科学的根拠もないんですよね。やはり自分の中で面白いと思うこと。あとは、自分の原体験で、昔からやりたいという作品はありますね。映画を観ていてこれを舞台化したいとか。日本のクリエイターがすごいなと思うのは、特にうちは台本と音楽の権利しか買わないので、美術や照明、衣裳は日本のクリエイターさんにお願いをするんですね。そうして海外とは違う味付けで同じ作品をやっていくと、日本のエンターテインメントの花が開いていくと思うんですよね。そういった点では『BARNUM』も台本と音楽権だけ買っているので、演出や衣裳は日本のオリジナルです。

【青野】海外の演出をそのまま持ってきても理解しづらいところがありますよね。

【江口】そうですね。そういう点では今回、翻訳と訳詞をやっていただいてる高橋亜子さんの訳詞が絶妙で素晴らしいんですよね。『ソーホー』もそうだったし。未だに憶えているのが、『ソーホー』の初めての通し稽古のときに、歌詞が全部入ってきたの。意味もちゃんと分かって。というのも、それこそがとても重要で。やっぱり言葉が入ってこないとね。日本語を音譜に乗せる、英語の情報量の方が多いから、いかに日本語でまとめていく作業は本当にすごいと思っています。

【青野】たしかに(『ソーホー』は)とても歌いやすかったです。

【江口】それで初めてお客さまに伝わっていくんだと思います。

【青野】ミュージカルを観に行って、私が一番フラストレーションが溜まるのは、歌を聴かなきゃいけなくなることで。江口さんの作るミュージカルは、フラットな状態でもちゃんと言葉が聴こえてくるので、さらに『BARNUM』が楽しみになりました。

【江口】ありがとうございます。

【青野】では、最後にお客さまに向けてメッセ―ジをお願いします。

【江口】今こういったコロナの苦しい時期ですが、必ず明日が来ますのでミ、ュージカル『BARNUM』を観て、ひと時の時間を楽しんでいただいて、明日への活力にしていただけたらと思います。

【青野】江口さん、ありがとうございました!

江口剛史さんとのインタビューを終えた青野紗穂さんに感想を伺いました。果たして青野さんが習字におさめた言葉とは?是非、ご覧ください♪
[su_youtube_advanced url=”https://www.youtube.com/watch?v=mWrWBOR1k8Y”]

苦境を強いられるこのコロナ禍の中で、コロナがなくなることをただ待つのではなく、その中で何ができるのかと葛藤し、新しい表現方法を見つけようと前進される姿に、エンターテインメントを創る礎を感じました。そして今だからこそ、届けられる作品もあるはず、と突き詰められ、生まれた作品がVR演劇とも伺いました。映像で演劇を楽しむことを目的とし、これまでの演劇制作、VR作品制作の蓄積を生かしたVR演劇は、まさにピンチをチャンスに変え、新しいものを生み出す江口さんのエネルギーが形となったものなのではないかと、今回のお話から感じました。ウィズコロナの中で作り出される作品を是非、体感いただきたい。
VR演劇:https://stagegate-vr.jp/

江口剛史
PROFILE
株式会社シーエイティプロデュース代表取締役。
ニューヨークのブロードウェイやロンドンウェストエンドで上演されている舞台の翻訳劇を中心に、ミュージカル、ストレートプレイと年間多数の舞台を企画。
https://www.stagegate.jp


公演概要
ミュージカル『BARNUM』
【出演】 加藤和樹  朝夏まなと  矢田悠祐 フランク莉奈・綿引さやか(ダブルキャスト) 原 嘉孝・内海啓貴(ダブルキャスト) 章平  工藤広夢  斎藤准一郎  泰智  福田えり  咲良  米島史子  廣瀬水美   中尾ミエ
【演出】荻田浩一
【日程・会場】
<東京>2021年3月6日(土)~3月23日(火)東京芸術劇場 プレイハウス
<兵庫>2021年3月26日(金)~3月28日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
<神奈川>2021年4月2日(金)相模女子大学グリーンホール
【チケット料金】
<東京・神奈川公演> S席 10,500円(税込) A席 7,000円(税込)全席指定
<兵庫公演> 全席指定 10,500円(税込)
【チケット一般発売】2021年2月14日(日)
【お問合せ】
<東京・神奈川>チケットスペース 03-3234-9999(平日10:00~12:00/13:00~15:00)
<兵庫>芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00~17:00 月曜休※祝日の場合)
【公式HP】https://musical-barnum.jp/
【公式Twitter】@musical_BARNUM