浦井健治&海宝直人が熱く語るミュージカル『王家の紋章』の魅力
細川智栄子あんど芙~みん原作によるミュージカル『王家の紋章』が、2021年8月5日(木)より、帝国劇場を皮切りに上演される。月刊プリンセス(秋田書店)で連載中の「王家の紋章」は、古代エジプトの王メンフィスと現代からタイムスリップした少女キャロルが紡ぐ愛を描いたストーリー。脚本・作詞・演出を荻田浩一、作曲・編曲をシルヴェスター・リーヴァイのタッグが手がけた本作は、2016年に初演、2017年に再演され、今回が3度目の上演となる。主人公のメンフィス役は、初演・再演から続投になる浦井健治、今作には初参加となる海宝直人のダブルキャスト。またキャロル役は、新キャストの神田沙也加と木下晴香。そのほかにも、平方元基、大貫勇輔、朝夏まなと、新妻聖子など豪華な布陣。今回、メンフィス役を演じる浦井健治と海宝直人にインタビュー。ふたりの今作にかける意気込みを聞いた。
――ミュージカル『王家の紋章』は、初演・再演と大好評で、ファンの熱い要望に応え、再々演を迎えます。浦井さんは初演・再演を経て、再び本作のカンパニーに戻ってくるお気持ちを。海宝さんは初参加になりますが、今のお気持ちを聞かせてください。
浦井健治 原作は、細川智栄子あんど芙~みん先生が、人生をかけて現在も執筆していらっしゃる世界中で愛される少女漫画の金字塔です。初演・再演では、「王家の紋章」をミュージカル化するという責任や重圧を感じながらも、多くの方に愛され、充実した達成感を味わいながらみんなで楽しい月日を過ごすことができました。今回は僕の演じるエジプトのファラオであるメンフィスがダブルキャストになり、海宝(直人)くんとご一緒できることがとにかく楽しみで(笑)。もちろん、今回のカンパニーでも、原作のファンの方がご覧になって、目の前に本物のメンフィスが立っている感覚を体感していただけるミュージカルに仕上げたいです。今回は新しいキャストが加わり、稽古場からみんなでイチから作り上げていくつもりなので、再々演というより、新しいミュージカル『王家の紋章』を作っていく心構えでいます。
海宝直人 学生時代に原作の漫画が実家にあったんです。当時は、まさか自分がこの舞台で主役を演じるとは思っていなくて(笑)。再演まで愛されているのは、現代では考えられない古代エジプトに通底している様々な価値観がダイナミックに再現されたからだと思います。僕にとって演じたことのないタイプのキャラクターなので、これまで経験することができない感覚を俳優として味わえるのが楽しみです。演出の荻田(浩一)さんやみなさんと共にメンフィス役にチャレンジしたいと思います。
――古代エジプトの王であるメンフィスはどのような役だと思いますか。
浦井 唯我独尊な性格、いわゆる“俺様系”で、そこがお客様の萌えのポイントになりますね。メンフィスは幼少時代から、神として生きることを運命づけられます。自我が芽生えた時にはすでにファラオだと思っているがゆえに、人を人とも思えない残酷な扱いをしてしまう。突き詰めていけば、子供らしいピュアさを持ち続けている人物でもあって。同時に博識であり、国のために国民を束ねる王としての自覚もある。そういった設定は、現在ではなかなか見当たらないので、俳優として役を理解していくのは大変ですが、今回は海宝くんと力を合わせて客観的にふたりで作ることができるので、これまで以上に人間味が出せるのではないかと思います。
海宝 漫画のデフォルメされたキャラクターのメンフィスを大切にしながら、役にリアリティーを持たせることも重要だと思います。人を平気で死罪にしてしまう残虐性は今の時代では考えにくいですが、当時の帝王学を学んだ彼には当たり前だったからこそ、演じる僕らには常識を振り切って役を生き切る覚悟が必要です。浦井さんがおっしゃったように、彼に内在する危うい少年性と神であるファラオとして崇め奉られるアンバランスさが魅力ですし、人を愛したことのない彼が、キャロルと出会って恋をして人間として成長していく姿を表現したいですね。
――お互いの印象はいかがですか。
浦井 舞台で共演するのは初めてですが、海宝くんの歌声にずっと魅力を感じていました。みなさんに海宝くんの印象をうかがうと、常に謙虚で、自分のお芝居を冷静に見つめることができる方だと聞いていたので、ご一緒できて嬉しいです。
海宝 浦井さんを初めて舞台で拝見したのは、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』でしたが、作品によって役の印象が変わって別人に見えるので「底が見えないすごい俳優だ!」と思っていて。本能で役を演じる凄まじいパワーを感じるので、今回のメンフィスではどんな変貌を遂げられるのか楽しみです。
――歌稽古を始められているそうですね。
浦井 海宝くんは、歌の第一声から声の響きが素晴らしくて、説得力があるんです。先日あった歌稽古では、キャロル役の木下晴香さんもいらして、海宝くんとの美しいデュエットを目の前で聴かせてもらって心地よかったですね(笑)。歌の抑揚を含め、とてつもなく上手で、お互いにその場で緩急をつけながら歌っていて感動しました。海宝くんは、これまでたゆまぬ努力をし続けてきたからこそ、キラキラした宝石が目の前にあるような素晴らしい歌声を出せる気がして。海宝くんのような歌声を出してみたいし、僕にとってこれからの稽古は学びの場になると思うのでワクワクしています。
海宝 本作を音源化したものを聴きながら、歌の参考にしているのですが、浦井さんの歌声は、メンフィスが本当に実在するように感じさせてくれるので圧倒されました。舞台は、本番を踏むのと踏まないのとでは、役に対するアプローチがまったく違うので、初演・再演の経験がある浦井さんの歌を参考にしながら稽古に臨みたいです。
――そして伝統ある帝国劇場で上演されますね。
浦井 帝国劇場に立たせていただくことは、とても名誉なことです。しかも、主演のメンフィス役なので、役者冥利に尽きるというか。もちろん、真ん中に立つので大きな責任を背負って役を演じたいと思います。
海宝 僕が初めて帝国劇場に立ったのは19歳の時で、ミュージカル『ミス・サイゴン』のアンサンブルでした。僕にとって大人の俳優として歩む第一歩になったので、いろいろなことを勉強させてもらいました。帝国劇場に立たせていただけることには感謝の気持ちしかないですし、いつでも特別な劇場です。
――最後にカンパニーを代表して、浦井さんよりお客様にメッセージをお願いいたします。
浦井 現在(取材日は6月中旬)、帝国劇場で上演中のミュージカル『レ・ミゼラブル』が大ヒットしていますが、コロナ禍の状況でも、エンターテインメントの素晴らしさ、演劇の文化は人の心に必要だと改めて感じました。演劇界をみんなで守ってきた1年ですし、これからも作品が安全に上演されるように、ミュージカル『王家の紋章』も誰ひとり欠けることなく、さらに感染対策を徹底して、お客様が安心して今作を堪能していただけるように、カンパニーみんなで盛り上げていきたいと思います。
取材・文 / 竹下力
浦井健治(うらい・けんじ)
1981年8月6日生まれ、東京都出身。2000年に『仮面ライダークウガ』で俳優デビュー。2006年には、第三十一回菊田一夫演劇賞、2009年に第44回紀伊國屋演劇賞 個人賞、2010年に第17回読売演劇大賞 杉村春子賞、2015年には第22回読売演劇大賞 最優秀男優賞、2017年に第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞など、数々の賞を受賞。主な出演舞台に、ミュージカル『エリザベート』、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』、『ヘンリー六世』、『天保十二年のシェイクスピア』、『リチャード二世』などがある。
海宝直人(かいほう・なおと)
1988年7月4日生まれ、千葉県出身。7歳で、劇団四季ミュージカル『美女と野獣』のチップ役で舞台デビュー。シンガーとして2019年1月『I wish. I want.』でソロメジャーデビュー。同年10月にはロックバンド「シアノタイプ」として1stアルバム『MONTAGE』、2020年12月アルバム『Break a leg!』をリリース。2021年8月にはシアノタイプのニューアルバム『PORTRAITES』のリリースを控えている。主な出演舞台に、ミュージカル『レ・ミゼラブル』、ミュージカル『アラジン』、ミュージカル『ライオンキング』、ミュージカル『ノートルダムの鐘』ミュージカル『イリュージョニスト』、ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』など。THE HIT OPERA SHOW『TRIOPERAS』でロンドン・ウェストエンドデビュー。
公演概要
ミュージカル『王家の紋章』
【出演】
メンフィス:浦井健治、海宝直人
キャロル:神田沙也加、木下晴香
イズミル:平方元基、大貫勇輔
アイシス:朝夏まなと、新妻聖子
ライアン:植原卓也
ミタムン:綺咲愛里
ナフテラ:出雲綾
ルカ:前山剛久、岡宮来夢
ウナス:大隅勇太、前山剛久
イムホテップ:山口祐一郎
ミヌーエ:松原剛志
セチ:坂口湧久
天野朋子、小山雲母、堤梨菜、藤咲みどり、山田裕美子、横関咲栄、米島史子、大山五十和、川口大地、熊野義貴、五大輝一、折井洋人、佐野隼平、下道純一、千田真司、長澤風海、橋田康、若泉亮
【原作】細川智栄子あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
【脚本・作詞・演出】荻田浩一
【作曲・編曲】シルヴェスター・リーヴァイ
【日時・会場】
<東京公演>2021年8月5日(木)~28日(土)帝国劇場
<福岡公演>2021年9月4日(土)〜26日(日)博多座
【チケット料金】
東京公演:S席 14,500円(税込)/A席 9,500円(税込)/A席 5,000円(税込)※未就学児童入場不可
博多公演:A席 15,500円(税込)/B席 9,500円(税込)/C席 5,500円(税込)※未就学児童入場不可
【お問合せ】
東京公演:東宝テレザーブ:03-3201-7777
福岡公演:博多座電話予約センター:092-263-5555
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